バイオ系ベンチャーに2社転職──最後に待っていたのは“倒産”だった
ベンチャー転職に希望を抱いたあのとき
「最先端の研究ができる」「裁量を持ってチャレンジできる」 そんな期待を抱いて、私はバイオ系ベンチャー企業へ転職しました。 いわゆる安定を捨てて、スピードと可能性に賭けた挑戦でした。
その後2社のベンチャーで勤務し、実際にやりがいや学びもありました。 けれど、振り返って今はっきり言えるのは、期待と現実には大きな溝があったということです。
1社目:熱量はある、でも組織が持たない
最初の会社は、大学発の研究成果をもとに設立された創薬系ベンチャー。 創業者は信念に満ちていて、採用面接でも熱いビジョンを語ってくれました。
しかし、いざ入ってみると、その理念が現場には浸透しておらず、 上層部の方針と開発現場の動きがバラバラでした。
マネジメント体制は曖昧で、「これ誰が決めたんだろう?」という状態が続き、 その日ごとにプロジェクトの方向性が変わることも当たり前でした。
2社目:「研究職」と聞いていたが…
2社目では診断薬の研究開発を掲げ、「研究職」として採用されました。 けれども実際の仕事はというと──
- 既存製品の仕様調整やバリデーション
- 顧客対応や不具合報告の整理
- 社内外資料の作成・チェック
いわゆる「開発後の製品保守」業務がメインで、 仮説を立てて検証するような研究活動はほとんどありませんでした。
そうして、突然の倒産通知が届いた
そしてその2社目、つい最近、経営破綻(倒産)を迎えました。 資金調達が難航し、売上とのギャップを埋めきれず、数ヶ月で急激に状況が悪化したとのこと。
退職していたとはいえ、自分が関わっていた企業が解散したと知るのは、正直ショックでした。 関係者の努力や、患者さんへの貢献を目指していた取り組みが、あっけなく消えてしまったのです。
ベンチャーだからこそ、問い直したい5つのこと
- 「研究職」とは具体的に何をするのか?
肩書きより、中身を確認しましょう。面接では「直近1か月の業務内容」を尋ねるのが有効です。 - 組織としての意思決定の透明性があるか?
意思決定プロセスや、現場の裁量範囲を事前に確認しておくと齟齬が少なくなります。 - 評価制度や昇給ルールが整っているか?
小規模なベンチャーほど、制度面の整備が後回しになりがちです。 - キャッシュフローの健全性と投資家との関係
資金調達ばかりに注目せず、売上とコストのバランスにも目を向けましょう。 - 自分のキャリアの軸と企業フェーズの相性
不確実性の高い創業初期より、シリーズB〜Cなどの拡大期の方が安定的かもしれません。
それでも得られたものがある
私自身、2社のベンチャー経験で傷ついたことも、自信を失った時期もありました。 けれど、今振り返ると、「自分は何を大切にしたいのか」という軸が明確になったと思います。
・技術的な深掘りか、広い視野か ・スピード感か、計画性か ・現場主義か、トップダウンか
それらの問いに向き合えたのは、ベンチャーという不確かな世界に飛び込んだからこそでした。
まとめ:ベンチャー転職は“相性”と“見極め”がすべて
ベンチャー企業は夢があります。社会を変える力もあります。 けれどそれと同時に、倒産や事業転換というリスクも常に隣り合わせです。
だからこそ、肩書きや雰囲気に流されず、自分の目で見て、問いを立て、選び抜くことが大切です。
この体験談が、これから転職を考えるあなたの参考になれば幸いです。 後悔のないキャリアを築くために、一歩一歩、慎重かつ前向きに進んでいきましょう。