はじめに:転職活動は準備がすべて
任期付きのポスドクとして働くなかで、将来の不安やキャリアの選択肢に悩む方は少なくありません。私自身もアカデミアでのキャリア継続に疑問を抱き、転職を決意しました。しかし、研究職から民間企業への転職は、決して簡単なものではありません。この記事では、ポスドクから一般企業へと転職するまでに実際に行った「7つの準備」について、具体的に解説します。
1. キャリアの棚卸しを行う
最初に取り組んだのは、自分のキャリアの棚卸しです。どのような研究をしてきたのか、どんなスキルを得たのか、何に情熱を感じているのかを、A4用紙3枚分ほど書き出しました。そこから見えてきたのは、「自分は実験や分析だけでなく、後輩指導やプロジェクト管理も得意だった」ということ。民間企業では、専門性と同じくらいコミュニケーション力やマネジメント力も評価されるため、この工程は非常に重要です。
2. 業界・職種研究で視野を広げる
次に行ったのが、業界と職種の研究です。製薬、食品、IT、メーカーなど、理系バックグラウンドが活かせる分野は多岐にわたります。また、職種としても研究開発だけでなく、品質管理、商品企画、マーケティング、テクニカルサポート、コンサルタントなどさまざま。私は製品開発と技術営業の2軸で職種を絞り、各業界の企業説明会に積極的に参加しました。
3. ビジネススキルの勉強を始める
アカデミアの外では、ビジネスの基本用語や考え方を理解しておく必要があります。私は『イシューからはじめよ』や『論点思考』などのビジネス書を読み、さらにオンライン講座(UdemyやYouTube)でExcelやPowerPointの実務スキルを学びました。研究では使わなかった「損益計算書」や「KPI」などの言葉にも慣れていきました。これにより、面接でも「企業の言葉」で話せるようになり、評価される場面が増えました。
4. 英語力の可視化と強化
多くの企業で英語力は重要視されます。研究で英語論文を扱っていたとしても、TOEICや英検などで可視化しなければ評価されづらいのが現実です。私はTOEICの勉強を1ヶ月行い、750点→860点までスコアアップに成功。履歴書に書くことで、実務での活用可能性を示せました。また、LinkedInでの英語プロフィール作成も行い、海外企業との接点を増やしました。
5. レジュメと職務経歴書の最適化
企業向けの職務経歴書は、研究者の業績リストとは全く異なります。私はまず「STAR法(Situation, Task, Action, Result)」に沿って、自分の取り組みをエピソード形式で記述。さらに、成果を数値で示すことを意識しました(例:「〇〇プロジェクトで実験計画を立て、開発期間を2ヶ月短縮」)。これにより、「この人は再現性のある仕事ができる」と判断されやすくなりました。
6. 模擬面接と逆質問の準備
面接では、論理的な受け答えと、企業理解が求められます。私は友人と模擬面接を繰り返し、想定問答集を100問ほど用意。また、「なぜこの企業なのか?」「この職種で何を実現したいか?」を自分の言葉で言えるよう練習しました。逆質問でも「御社の評価制度やチームの構成」など具体的に掘り下げることで、志望度をアピールしました。
7. 小さな実績を副業で積む
企業が求める「実務経験」を副業で補完する戦略も有効です。私はクラウドソーシングでライティング案件を請け負い、科学記事の執筆を行いました。実績としてブログにまとめておくと、書類審査や面接でも評価されました。「お金をもらって働いた経験」があると、ポスドクとのギャップを埋めることができます。
まとめ:転職成功は“準備”が9割
ポスドクから企業に転職するには、専門性に加えて「ビジネス理解」と「実務対応力」が求められます。しかし、それらは事前の準備で十分に補うことができます。今回紹介した7つの準備を通じて、私はスムーズに企業へ移行できました。ポスドクという経歴はネガティブではなく、しっかりと武器にすることが可能です。少しずつでも準備を始めていけば、あなたの可能性は必ず広がります。